個人賠償責任保険とは、住居の所有・使用・管理や日常生活に起因する偶発的な事故により、他人の財物を破損したり、他人を怪我させたりして法律上の責任を負ったときに補償される保険のことです。
通常、個人賠償責任保険は、何かの保険の特約としてつけるもので、それのみで契約することができません。
多くのご家庭では自家用車をお持ちですから、自動車保険に加入される際に特約をつけているのかもしれません。我が家は車を保有していないので、そこらへんがよくわかりません。
個人賠償責任保険は、かなり安い掛け金でも補償額が1億円以上つくことが多くて、子どもがいるご家庭では安心材料になりますよね。
もちろん、保険会社によって補償内容がちがうので一概には言えませんが、適用されない場合について、
- 故意により生じた損害。(当たり前)
- 地震、噴火、津波、洪水、戦争、内乱、暴動、核燃料物質などにより生じた損害。(台風は入っていない)
- 仕事の業務中の事故。(会社の保険を使うから)
- 同居の親族に対する損害賠償責任。(自作自演できちゃう)
- 被保険者が所有・使用・管理する財物の損壊について、その財物につき正当な権利を有する者に対して負担する損害賠償責任。(※)
- 自動車、航空機、船舶、銃器の所有・使用・管理に起因する損害賠償責任。(それぞれの保険で)
などが挙げられています。
5つ目の※にしたところが、結構見落としがちな気がしました。今回、なんでこんなことを記事にしたかというと、子どもが通う塾から「専用タブレットを無償貸与」するということで、ただそれに数千円程度の「安心パック」なるものをつけるかどうかということを判断しなくてはならなくって調べたのでした。
実際、※で示したものについてはケースによるものもあるようです。私の解釈ですと
- 貸借契約を交わしたものは、被保険者が管理するものと見られ、保険適用外。
- 「ちょっと貸して」と言って触っていたものを落として壊してしまったような場合は適用される。
といった感じです。
したがって、レンタルの契約を交わしているものに、個人賠償責任保険は適用されないと考えるのが妥当なようです。安心パックには加入した方がよさそうです。
さて、こうなるとやっぱり思い返されるのが、学校から「無償貸与」という形で借用書を半強要されているiPadの扱いです。学校の机とか椅子といった備品を壊してしまった場合は、個人賠償責任保険の適用内になると判断できます。iPadも「学校備品」として扱われていれば補償の範囲内のはずなんです。
市の財産は、大きく分けて「行政財産」と「普通財産」があります。行政上必要な財産は行政財産で、学校や図書館は行政財産の公共用財産にあたります。図書館の本なども公共用財産です。図書館の本を亡失・汚損してしまった場合は、横浜市では同じ図書を弁償することになっています。
ところが、GIGA端末は、普通財産の無償貸付の位置付けであるらしいのです。どうしてそのような扱いになるのかが理解できません。ただ、おそらくは貸付契約がしやすく、市民である子どもとその保護者が一番面倒なく借りる契約を結ぶことができるためなのかと思います。それでも、はっきり示されていないことが「運用側の都合」ではないかという猜疑心や不信感につながりかねないとも思います。
横浜市公有財産規則では、無償貸付の契約主体は市長であって、借用書を書くなら宛先は市長になるはず。ところが、学校からもらった借用書の宛先は学校長になっています。内部規定によって事務委任が行われているのかもしれませんが、私としてはこういった不透明さは、法的リスクも高めますし、何より行政への不信感につながると危惧します。
さて、これでは個人賠償責任保険は適用されませんから、「借用書」に同意しない方がよいのではとも考えられます。ただ、実質は市が一括して保守契約を結んでいる中で、塾のタブレットのような「安心パック」は加入済みであり、通常使用による過失で保護者に賠償責任がくることはありません。家庭の保険を使わずとも、市が契約した保険でまかなえます。ですから、基本的には安心して使用していればよいことになります。
一点だけ心配なことは、弁済対象になるかどうかの判断は校内委員会でされるという点です。もちろん、保護者に示された「横浜市立学校における新教育情報ネットワーク等端末利用ルール」に則って判断されるでしょうからよほどのことがない限り妥当な判断がされると思いますが、学校の中の教職員は法律の専門家ではありませんから、ときに私情・私観が入って判断を誤ることもあるかもしれません。「校内で故意である」事案については、弁済対象になりますし、それは家庭の保険でも適用できませんから納得するはずですが、保護者が見ていないときの事案について「故意」を丁寧に説明しなくてはいけないですから大変でしょう。また、逆に「家庭内での使用」については、図書館の本ならば個人賠償責任保険が適用される可能性もあります(少額は適用されないとか、公共物については他の特約が必要な場合もある)が、貸借契約を結んでいる以上、「適切な管理が行われていなかった」場合は、保険が適用されずに弁済対象になってしまうわけで、十分に上述の端末利用ルールを確認して遵守しなくてはなりません。学校としてはそのありさまを確認できるわけではないので、汚損の状態で厳に対処しなくてはならず、保護者との間でトラブルになってしまうかもしれません。
我が家だったら、端末持ち帰りは遠慮して、自宅にある端末を使用します。だって家に子ども用のタブレットがあるのに、あえて賠償リスクを負う必要がありませんから。貸借契約には「学校内の利用」も目的に入ってしまっていたので、同意するほかありませんが、校内での使用に関しては問題はおきないと思っています。
公教育の教育活動で必要な学習道具に対して、他の行政財産とは異なる扱いになることについてはなかなか納得できないのですが、そういったことを行政は丁寧に説明する必要があります。(税金の扱いの問題だから、学校が説明するものではないでしょう)
保険のお話でした。
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