米価格の高騰が大変なことになっていますね。4,000円を超えるとか、エンゲル係数爆上がりです。政府では3,000円台、いや、2,000円台を実現するとか言っていますが、果たして今後の米の価格はどうなるのでしょうか。多くの家庭が心配されていることでしょう。
記事が長文になってしまったので、本記事は「どうなる」について書きます。次回、「どうする」について書いていこうと思います。
先に私の考えだけ書いておくと、
「どうなる」については、「当面、米の値動きは落ち着かない」
「どうする」については、「米の価格は市場に任せていくべき」
です。
なぜ米の価格は上がったのか
令和の米騒動
令和の米騒動には私も驚きました。まさか中高生時代のインディカ米輸入が始まるんじゃないかと震えたものです。2023年の記録的な猛暑による米の収穫量の減少が原因とされ、2024年夏には、スーパーのお米売り場から本当に米がなくなりました。
2024年は、十分な米の収穫が見込まれ、9月には価格が下がるという話でした。米の価格は一瞬下がりましたが、11月頃にはまた元の高値に戻りました。なぜでしょう。
需要が拡大した面もある
世界情勢の悪化から、小麦の価格が高騰しています。比較的単価の安い米を消費者が求めるようになったというのもあります。だからこそ今「米が高いからパンを食べるか」なんて笑えない状況なんです。
また、円安による記録的な外国人観光客の増加によって、外食産業でも米の需要が高まっていることも理由の一つにはなるのではないでしょうか。
流通に問題がある?
農水省は流通(卸売業者)に問題があるとしていました。本当にそうでしょうか。
もちろん、原因の一つではあると思います。夏までの不安定な状況から出た損失を取り戻していくには、その分のコストを上乗せしなくてはなりません。また今後の安定供給責任のために、高値でも仕入れルートを確保しなくてはならないこともあるでしょう。ですが、JAがほとんどを集出荷している現状で、一部業者による買い占めと売り惜しみなどが市場価格にまで影響を及ぼすとは到底思えません。(訂正:「NOMURAウェルスタイル」によると、生産量に対する集出荷業者の取り扱いは50%程度にまで下がっているとのこと。その他は農家直売や農家消費などがあり、流通ルート自体は多様化してきているようです。ただ、集出荷のうちのほとんどはJAです。)私としては卸売業者全体が悪者のようにされている現状はとても良くないと感じています。
令和の米騒動から再度の米価格高騰には、「米価格が下がって欲しくない」立場が存在していると考える方が自然に思えてしまうのですね。事実かは分かりません。でもそう思えてしまうということ。それだけ米の価格決定だけ不透明な現実はあるのです。
備蓄米とは何か
大義は
いや、備蓄米くらい知ってるよって話ですよね。記録的な不作のときに、国民への供給不足を補うためというのが目的とされており、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の中で制度化されています。毎年20万トンを国が買い入れ5年間保管しています。5年分で100万トンとなり、現在の日本の米需要のおよそ7分の1にあたります。5年経った米は、飼料用などとして販売しています。
凶作の年も備蓄する
とても変な話ですが、不作だったという2023年にも当然買い入れしていますし、米価格が高騰している2024年にも買い入れをしています。「法律で決まったこと」だから、やらないわけにはいかないのですよね。
放出とは
備蓄米を放出するというのも、法律に照らし合わせて適用できないと放出できないんですね。法解釈でいけるのか、法改正が必要なのかなんて議論もありました。
備蓄米を「放出」と言いますが、元農水大臣の話では「貸付」して「買い戻す」とありました。まあ貸し付けるっていうのは日本語として明らかにおかしいですよね。米を貸して売って食べて返せるものないですし(笑)。これも法の適用のための方便だったのかなあとは思うところ。
備蓄米は、返さないといけない
政府による備蓄米を買い入れ先のほとんどはJAです。そして備蓄米の放出先(貸付先?)も今の所JAです。随意契約の話も出てきましたが、これには法改正が必要でしょう。だって、政府が再び買い戻すんですよ。これ、JAにはできますが、楽天にはできません。米を1年後に返さなくてはいけない(買った分の量、国に米を売らなくてはいけない)のですから。
入札資格の最低限度1万トンの仕入れ実績を持っていた業者を想定して、その1万トンはこれまで必要量として仕入れていたわけです。となると翌年また必要な1万トンに加えてさらに1万トンを仕入れなくてはなりません。仕入れ先となる生産者や団体を確保しなくてはなりません。年間生産量が700万トンであることを考えると、JA以外の入札資格者が、翌年も安定した価格を保ちつつ備蓄米に随意契約をするというのは非常に困難を極めると想像できます。
各報道(私が参照したのはNHKの記事)によると買い戻し条件はつけないということでした。であれば、随意契約は取るべき一手となりますね。まだ小泉大臣が言及しただけで、実現するかどうかはわかりませんが。
そもそも本当にコメは足りなかったのか
農林水産省が出している統計資料を見る限り、2024年が不作だった事実はありません。主食用米の生産量は、前年比で9万トンと微々たるものでした。そして気候による影響を受けたとは思えないほど、年々少しずつ減少してきています。
本当に減反政策は終わったのか
減反政策は終わり、生産者による自主的な生産調整が行われるようになっているというのが建前です。生産者は、保有している田の全てに毎年MAXで作付けをしているとは限りません。需給のバランスが崩れてしまうと価格崩壊を起こしてしまい、収入が減少してしまうからです。兼業農家など現在の米農家のほとんどである小規模生産者にとっては特にそういった調整を行うことは難しく、農家全体を守るためにもJAは「助言」という大事な役割を果たしているのだと思います。(「指示」があるかは分かりません)
単純に「需給の読み違え」が、米が足りなくなった原因だったのかもしれません。
生産量はあるが販売量は少ない?!
ところが統計資料では、一昨年の需給バランスはトントンなんですよね。十分な生産量があったのに起きた令和の米騒動。「記録的な猛暑で生産量が少ない」の流布によって市場心理としては価格が上がりやすい材料にはなったでしょう。しかし、米の価格は市場が決めていないんです。JA(とごく一部の出荷団体)と卸売業者との相対取引になります。ほとんどの価格主導権をJAが握っているわけですから。
価格を上げたかったのは、やはりJAだったということでしょうか。生産者を守る立場として、その思いは当然です。こういった思いからの価格決定が、引き金になってしまった可能性はありますね。
でなければ、もう統計資料の読み方を疑うほかありません。「主食用米の生産量はしっかりあるけれど、実際に販売できる等級の米の量は少ない」とか。資料7ページの右下の断り書きからそれがうかがえます。
やはり2年間、足りていないのでは
農水省の「米がない」「十分にある」の言葉だけでは何が本当なのか、判断することは難しいです。2023年の記録的な猛暑で、確かに販売できる等級の米の量は足りなかった。南海トラフ地震懸念など買い溜め心理が働いて、米の供給不足に拍車がかかった。2024年も記録的な猛暑で、本当は販売できる等級の米の量は足りなかった。でも、「ある」といって、卸売業者のせいだといった。本当に足りていないから、価格も高騰した。また、ここぞという価格上昇の機会と捉えて価格維持の調整をしているというのが現状なのではないかと考えます。
価格が下がるのは一過性
私の結論としては、随意契約による備蓄米放出、あるいはあるかもしれないMA米の売り出しによって、一時的に価格は下がると思います。
ですが、これから放出される備蓄米が、一昨年の玄米であれば、実際に店頭に並ぶ価格はあまり下がらないか、低品質のブレンド米が並ぶ可能性があります。精米してみて使える米が全然なかったら結局店には出せないはずですし、あるいは下米なのにそのままブレンドして出してしまう悪徳販売になるのではないでしょうか。
生産者の収入が安定するように、米価格の適正化が必要というのは本当にその通りなんです。が、農政トライアングルによる現状を持続可能にする方向性では、近い将来に大破綻が来ると考えます。今回の価格高騰は、その始まりを告げているようにも思えてなりません。
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