全方位の信用なんてない

世情

 先日来のニュースをずっと引きずっています。

 私も「怒り」に支配されそうになりますが、「批判されていること」などを見て、私なりの考えを表しておきます。一個人の言葉であって、保護者代表でも男性代表でも、教員代表でも男性教員代表でもありませんことをお断りしておきます。

文科大臣の言葉に疑問符

 「本当に怒りを覚える」に違和感を覚えました。「被害を受けた子どもたち」のことを思うと怒りを覚えるのは同感です。ただ、「日々頑張っている多くの教師の皆さん」のことを思って怒りを覚えるって、この場で言うことなのでしょうか。一気に「内輪感」が出て、印象はよくないなと思います。

 それと、先日のブログにも書きましたが、ショックを受けたのは被害児童はもちろんですが、それだけではありません。この教員に関わった全ての子どもと、保護者や地域の方がショックを受けているんです。もちろん、同じ職場で働いていた教職員もそうでしょうが、教職員のショックはまた違ったものだとも思います。信頼していた同僚がまさかというショックもあるでしょうが、同時に「見抜けなかった自分」「学校の子どもたちを守ることができなかった自分」というものを責める気持ちの方が大きいはずです。

 「服務規律の確保の徹底を指導」という言葉には、中の人間としては憤りすら覚えます。世の中には知らなかった分からなかったで法に違反してしまうものもありますが、今回のような犯罪は「倫理に反することはもちろんのこと、法律にも違反している重大な犯罪である」ということを認識した上で行われているものです。「文科省は今回の件について何も仕事しません」と言っているに等しいです。「真面目に働いている先生たち、こういう事件があると、世間からの風当たりが強くなって大変よね(労い)。みなさんは教育委員会や学校長の言うこと聞いて、服務規律守りましょうね、いいですか(「はーい)」って、教職員に対しても保護者に対しても国民に対しても馬鹿にしてるように思えてしまいます。

犯罪者のイメージ、漫画じゃないんだから

 たとえば学校で不審者に気をつけましょうの指導をするとき、必ず「黒づくめの服に、帽子にサングラスにマスク」なんて格好していないって話します。子どもには何度も伝えていますが、なかなか「名探偵コナンに出てくる犯人」みたいなイメージから脱せない子もいます。

 犯罪だって分かっていて犯罪をする人って、自分が犯罪者に見られないように装いますし、24時間犯罪をし続けているわけではなく、日常の生活を送っているんです。普通の人と変わらないんです。見た目も、言動も。なんなら犯罪の種類によっては、普通の人よりも「親切」「優しい」「穏やか」を出していることだってあるわけです。

 分かっていて、バレないように、隠れて行う犯罪をする人を素人が見抜くのは無理です。

 逮捕された人間も、きっとそのどうしようもない変態と悪意はあるものの、一方で教育に対する情熱もあわせもっていたのだと思われます。これが人間の姿なんです。

個人スマホ不携帯は、効果につながらない

 ヤフコメなどでは「教員はスマホを携帯しないようにしたらいい」という意見がたくさんありました。すでにコンプライアンスでスマホを教室に持って上がらないとしている自治体はたくさんありますが、犯罪が減っている様子は見られません。

 「校内でスマホで撮影」という事件もありましたから、効果0とまでは言いません。ですが、上述の通り、分かっていて、バレないように、隠れて行おうとしている人、そしてペン型小型カメラなどいくらでも簡単に手に入る現状で、校内におけるスマホ不携帯というのは、教育委員会などの「防止策取りました」アピール程度にしか機能しないのではないでしょうか。

 また、GIGA端末が児童生徒にも教員にも一人一台ある中ですから、個人スマホ不携帯が対策としてほとんど意味をなさないことは、学校に通う子ども、通わせている保護者なら十分に分かっているというのが私の意見です。

性犯罪は男性が圧倒的に多いが、男女で区別していてはいけない

 性犯罪者の男女比率は、印象だけでなくぜひ統計にあたってもらいたいところではありますが、「印象通り」圧倒的に加害者は男性が多いです。被害者の割合は種別にもよるようですが、いずれにしても女性の方が多いです。

 これは生物学的なものがあるのでしょうけれど、適当なことを言っても仕方ありませんし、事実だけは認識しておいてよいでしょう。ただ、一方で先日のブログにも書きましたとおり、教員のように「地位関係性」の悪用という観点から眺めてみれば、対子どもへの加害は男女関係なく起きるのです。そして、性犯罪が異性に対してというものでもありません。男性・女性のどちらの教員も加害者になりえますし、男子・女子のどちらも被害者になりえます。

 防止策をとるとなったときは、このことを踏まえなくてはなりません。子どもとの面談を密室で行わない、指導を一対一ではなく複数で行うなど周知されていますが、中には「異性の子どもからの相談では」といった古いコンプラも見受けることがあります。予断なく防止策はとるべきです。

真面目にやっている男性教員がかわいそう?

 犯罪として摘発・逮捕された人間が氷山の一角だとしても、ほとんどの教員(99%以上の教員)は、全く犯罪に関わっていません。

 男性女性は関係ないにしても、性犯罪に関しては統計からも印象からも、男性にたいする厳しい目が向けられるのは仕方のないことです。まじめにやっている男性教員からしてみれば「ふざけんなよ」って思うこともあるでしょう。

 私の一意見なので、そういった男性教員からは猛反発がくるかもしれませんが、私は保護者も子どもも、「性」に関していつだって注意を怠らないでほしいと思います。「うちの子のことをエロい目で見ている」とか誹謗中傷は絶対ダメでしょうが、どんなに一生懸命子どもに向き合ってくれている先生であっても、何せ「犯罪者は分かっていて、バレないように、隠れて」やるもので、「誰にも見抜けるものではない」という前提で、子どもを守る意識をもっておくべきです。

 疑いの目で注意を向けられることも業務の一環でいいんじゃないかと、私は思います。子どもを守っていくためには適度なプレッシャーがあった方がいいと。自分の言動をいつも外側からチェックするくせをつけることにもつながるんじゃないかと思います。それは、そんなに負担じゃないと私は思うんですね。授業参観の日数を増やすより、何十倍何百倍も楽なことですよ。だって、ありのままでいるだけでいいんですし、そのありのままを日常的にアップデートしていけばいいのですから。

だがしかし、これだけは強く抗議したい!

 一つだけ、これだけは看過できないコメントがありました。それは「これだけブラックな労働環境で、成り手不足になっているから、こういったおかしな性的嗜好を満たす目的のやつじゃなきゃ、教員になんてなろうとしない」といったもの。

 こういうコメントをする人はそういう目的心理だってことでしょうから、「0である」とは言えないわけですが、正直言って全くの的外れです。

 むしろ逆ではないでしょうか。

 これだけブラックな労働環境だと知っていても、なお夢をもってこの仕事にとびこんできてくれた人たちなんです。うまくいかないこともいろいろあるでしょうけれど、日々子どものために一生懸命研鑽を積んでいるんです。

 全国の小中学校を見て回ったわけではないですから、あくまでも私の関わった周囲の人でしかありませんけれど、今の若手の先生のひたむきな努力の姿には、頭が下がります。

 逮捕された人は、就職氷河期世代やゆとり世代でしたよね。そこからも「今の成り手不足」とZ世代へのラベリングは合っていないではないですか。

 いかにニュースを適当に聞きかじってお茶の間から無責任に批判しているのかがよく分かります。

 本当に「子どもを守りたい」という強い目的意識をもった人が、教育界全体に批判の目を向けることはこれからも絶えず続けていってもらいたいと思います。一方で、雑なラベリングによる誹謗中傷は負の結果しかもたらしませんからお断りです。

再確認

 悪意ある犯罪者は、バレないように最大の努力をするから、それを身近な人に見抜けというのは無理がある。

 雑なラベリングは、自己満足でしかなく、何の解決も生産性もない。

 「見抜けない」を前提とした防止策が必要。関係者は、「子どもを守る」ための実質的正義を大事にし、遠慮せずに教職員への注意を怠らない。信頼は大事。でも教職員に限らず、人間に全方位の信用なんてない。

 個人スマホ持ち込み禁止は、「防止策うちました」のアリバイ程度にしかならず、そんなことを求めても意味がない。そんな無意味な批判をすることは、アリバイに加担するくらいマイナス。

 環境整備には、予算が必要。こういうことにこそ、積極的に意見を出してもらいたいし、文科省は仕事してもらいたい。

最後に

 盗撮は、一人一台端末になってから、学校現場では本当に深刻な問題です。着替えの際は、全員が端末をしまったことを教師が確認してから着替えさせます。また盗撮だけではなく性事案が起きないように、黙って、周りをキョロキョロせず、着替えることを徹底しています。同性の性加害被害もあるからです。

 勤務する学校では、着替えの際はむしろ教員が必ず教室につくようにしています。それでも私だったら男性なので男子の更衣に立ち会うわけで、女子の更衣の安全について完全には守れる状態とはいえません。プールの着替えでは、職員をかき集めてどうにか空白をつくらないようにしていますが、校内職員では男女比率が大きく違うこともよくあり、体制作るのも大変です。

 これに教員への監視もとなると、倍の教員が必要になりますね。教員以外の外部派遣というのも「変態は教職員の中にだけいる」わけではないですから、そう単純な話でもありません。むしろ特別職の人には余計疑いの目を向けづらい、あるいは無根拠に信頼してしまうといった心理的なバイアスもかかりそうですし。

 空き教室があるわけでもありませんから、着替え場所をすぐにどうこうすることは無理そうですし、とにかく人手が足りない学校現場ですからダブルチェックというのもなかなか難しそう。トイレは定期的に巡回していますが、常駐は無理です。

 棚とかが全くない部屋で、外にある着替えかごを一人一つ持って中に入るようにして、着替え監督の職員はポケットなどがない専用の服を着て、とかすればいいかしら。でも、空調ない部屋とか地獄だし、教員に特殊な服着させる時間もなさそうだし。

 毎日教員が掃除指導の担当場所をシャッフルして、そこで変なものがないかなどチェックするという体制をとるとか。

 なんか道路の側溝に潜んでいた人とかいたよね。校内でなくても、商業施設とかでやっちゃうやつまで0にするのは無理だろうなあ。

 0は絶対に実現しないけれど、この手の犯罪は、限りなく犯罪ができない環境をつくっていくことが効果的ですから、知恵出して、お金も出して解決に向かっていかなければなりません。

 性事案、セクスティングについては、学校だけを考えても守れませんし、対象を教職員に限定して考えても守れません。今回のような事件があると学校や教職員に非難の目がいくのは当たり前ですし、学校内は学校がどうにかして子どもを守っていかねばならないのは当然です。ただ、子どもを性被害から守るという点では、もっと広く考え、環境(教育に予算をとらない政治からも)を見直していくことも必要です。

 今回、パラフィリア、フェティシズム障害という側面には触れませんでした。一般人が友人同士でフランクに語るような「私〜フェチなの」というものと、精神疾患とは別物であって、論点がずれそうだったことと、今回の逮捕者がどちらに当たるかは知るよしもないですし、被害者が目の前にいる今の段階で、仮にフェティシズム障害であった場合について言及することはふさわしくないと考えたからです。別記事にします。

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