「あらゆる支援を」の一つ

世情

 一つひとつの支援がどれも大事であって、できるところから一つでも支援を増やしていくことが大事であって、一つひとつが積み重なっていくからこそ、困難な状況を多方面からもれないように解決していく道筋になる。一つの支援策を、それが全てかのように捉えさせて、批判を煽るというのは、下品でしかたがないことです。

 厚生労働省が10日までに、「緊急小口資金」の対象に特例として能登半島地震の被災世帯を加えることを決定したということがニュースになっていました。(制度上の決定で、都道府県に通知したものなので、厚生労働省のHPには掲載されていませんでした。ゆえに引用のかたちで表示していません。)

 報じられた事実に対して、ネットではいろいろと怒りの声が上がっていたようです。まあ、その事実の捉え方は人それぞれですし、もっている知識によって誤解から怒りを覚える人がいることも当然です。ただ、そういうネットの声をわざわざまた記事タイトルにして、政府批判・首相批判を煽るような報じ方は、大変よろしくないと感じました。それに対して私はどうしたらいいかなと考えまして、

  • 「下品」とだけ批判しておく。
  • 「緊急小口資金」について調べ、ここで紹介する。

ということにしました。

煽り記事は、支援の足を引っ張る

 上述の「緊急小口資金」の特例貸付の決定について、Xで「こんなひどい政府聞いたことない」というつぶやきがあったそうなんです。それがなにかもっと文脈がある中での意味のある嘆きだったかもしれませんし、政治の仕組みをあまり理解していないことによる投稿だったかもしれませんし、他の何かかもしれません。

 「政府」とは、一般的には内閣と各省庁までの組織をさします。Wikipediaによれば、広義には行政府によらず立法府と司法府も含めた統治機構を指すとも書かれていますから、(まああまり考えにくいですが)Xでの投稿者は、日本の統治の仕組みそのものを嘆いたのかもしれません。

 これのつぶやきを取り入れて『岸田首相、自身の被災者に「最大20万貸します」であふれる憤激「こんなひどい政府聞いたことない」』という見出しにした記事がYahoo!ニュースに載りました。(記事はFLASHのもの)これでは、まるで岸田首相がこの方針を決めたかのようです。被災地支援策として一人の人間が考え出したものが給付でもなく「貸付」で、しかもそれが「たったの20万円」であるかのように解釈してしまう、そういう流れが見えてきて、なんとも虚しくなります。

 世間の感覚というのは、そういうものになってきているのかもしれません。それはまさに誤解を生むような見出しの記事にずっとさらされているからだと私は思います。内閣総理大臣は首相であって、大統領ではありません。あくまでも行政府の長です。(以前、立法府の長であると言った首相がいましたが・・・)記者がそんなことわかっていないわけがないんですね。その上であえてこういう見出しをつけるというのは、インプレッション稼ぎに奔るYouTuberなどと変わりありません。これは、今多方面で指摘されているように、被災地支援の足を引っ張ることに他ありませんから、「下品」と表しておきます。

緊急小口資金ってなんだろうか

厚生労働省が作った制度

 「緊急小口資金」とは、厚生労働省が行なっている生活困窮者に向けた支援制度です。

 私は法律の専門家ではないので、生成AIとe-Gov法令検索などを利用しながら調べていきました。

まず、社会福祉法というものがあり、

この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まつて、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もつて社会福祉の増進に資することを目的とする。

社会福祉法

そして、生活困窮者自立支援法というものがあります。

この法律は、生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする。

生活困窮者自立支援法

これらを裏付けとして、貸付事業があります。緊急小口資金の貸付額は10万円が上限額でした。これが、新型コロナウイルスで生活が困窮する人が増えたため、特例貸付が行われました。また上限額もそのときに20万円に引き上げられました。新型コロナの時に厚生労働省から出されたYouTube動画を貼っておきます。新型コロナのほかにも、過去に大雨などの自然災害でも特例貸付が行われています。

 今回の能登半島地震の被災者に向けて、あらゆる支援策を検討し、一つ一つ進めているところですよね。「緊急小口資金貸付制度を、特例として適用する」というのも支援策の一つであるわけです。で、念をおしておきますが、この決定は厚生労働省がしました。岸田首相と武見厚生労働大臣との間でやりとりがあったかもしれませんが、それは分かりません。

制度は制度

 いずれにしても、これは法律に基づいて行政が執った制度的支援であり、この支援は制度内でしか運用ができないと解釈するのが妥当でしょう。貸付は個人に行われるものですから、国民みなが認知するほどの大災害であった今回の被害によらず、たとえば例年あるような台風などでも、個人でみれば大きな被害を受けてしまった方だっていらっしゃるわけです。通常の条件よりも緩い条件で適用したり、貸付上限を2倍にしたりする特例は、そう簡単にできるものではありません。個人レベルでの被害状況が仮に災害はちがえど同じだった場合、不公平感が出てしまいます。

 お金のでどころが「税金」であるならば、国民の納得が一つの材料になるのかな、と私は思います。

 「貸付とかバカなこと言っていないで、給付をすべき」という批判もあるでしょう。でも、「貸付制度」も支援に使うというのであって、「給付」は別の制度を使えばよいのです。個人的に言えば、税金によらず、今は支援金や義援金に個々人が応じるのが一番よいと思っています。税金って、そんな機動力がものではありませんし、たとえば支援金は機動力が高いです。某テレビ番組の募金の横領なんてニュースもありましたから、信頼性について不安をおぼえる人もいるのでしょうが、政府をこれだけたたけるのであれば、むしろっていう考え方もできるでしょう。

内閣府の出している情報など、直接のソースにあたるのもよいのでは

 内閣府のHPには「防災情報のページ」があります。そこから、今回の能登半島地震に対してどのような対策を講じているか、記者発表などからわかります。「適用すべき措置の指定」などがよく分かるのではないでしょうか。

 また、ちょっと古いですが、平成29年に内閣府が出した「被災者支援に関する各種制度の概要」というPDFファイルが、行政から受けられる支援を一覧できるので分かりやすいと思いました。リンクだけでも覚えてあれば、自身が被災したときにも活用できそうです。

支援金と義援金

 支援金と義援金の違いについては、日本財団のHPがわかりやすかったので、リンクを貼っておきます。(文章の引用より、図がとてもわかりやすいので、ぜひ見に行ってください!)支援金は、団体が受け付け、救命・復旧活動にも使われますし、被災者にすぐに支援が届きます。義援金は、被災者への直接的に見舞金などを届けるため、救命・復旧の資金にはされませんし、被災者の人数などが確定するまでは動きがないようです。

「支援金と義援金のちがい」日本財団

あらゆる支援の「一つ」を考えていきましょう

 能登半島地震は、おわった過去の災害でなく、今なお継続している災害です。被災地の方々の状況を想像すると心が痛みます。「緊急小口資金」貸付制度の実際の出番はまだ先かもしれませんが、政府には引き続きあらゆる支援策を講じていっていただきたいですし、民間団体による支援や個人の支援も被災地に届いていくように心から願っています。

 最後に、お金を出せない人は何も後ろめたい気持ちをもつことはありません。国が何か税金で支援をしたらならば、それは自分がしたことでもあります。そして被災地の方へ応援の声をあげていただいたり、しっかり経済を回していただいたりすることもとても大事なことですよね。

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