日経平均株価最高値更新について

世情

 2月22日(木)、日経平均株価が市場最高値を更新しました。そのニュースは、おそらく株をやらない人でも、NISAはやっているけれど詳しくは知らないという人でも目や耳にしたことでしょう。

 このニュースに対して、金融のプロの人でも「週明けには40,000円を突破し、年内に50,000円突破も視野に。」という人から「まもなくバブル崩壊。」という人まで様々です。株価がこの後どうなるかは、誰にも分かりません。だから言いたい放題言えます。だから、私も言いたい放題言います。

 強いていうなら、プロの言には人がなびいてしまう(そして投資の世界の場合は、財産に大きな影響を与えてしまう)ので気をつける必要がありますが、一方私の言で投資判断する人は誰もいないので安心して述べられます。多少、投資経験がないと分からない用語が出てくると思います。

日経平均株価の推移

 日経平均株価とは、日本経済新聞社が東京証券取引所プライム市場に上場する企業から選んだ225銘柄の平均を指します。指数であって、そういう名前の株が存在するわけではありません。ただ、先物には指数の商品があるため、「日経225先物」などで取り扱いがあります。

 225銘柄は、現在春秋に定期入れ替えが行われています。ただ、入れ替えがあるから指数が上下するというわけではなく、それぞれの会社の株価の上下の結果の平均値であり、日々変動しています。

日経平均株価の全推移

 日経225の指数が公開されてから今までの年単位の推移をChatGPTにチャート化してもらいました。始値、終値、最安値、最高値をプロットしてできるローソク足で描画してあります。また、バブル最高値と、リーマンショック前後のボトム、ピーク、ボトム、そして先日つけた市場最高値更新時の株価をチャート内に表示させました。

日経平均株価の年足チャート。データは「日経平均プロフィル」のヒストリカルデータより

 高度経済成長期の駆け上がり方がすごいですね。バブル崩壊のきっかけについては諸説ありますが、ある日のビッグニュースで大暴落したというよりは、1990年の大発会から下落に転じたというかたちです。3年間で50%も株価が下がってしまいました。2003年には、りそな銀行に公的資金が注入されました。その後2008年にリーマンショックで大暴落がありましたが、日本経済は回復基調に乗ろうとしていました。2011年に東日本大震災があり、経済的にも大ダメージとなりました。その後は、上昇に転じて現在に至ります。2020年の大きな下ひげは、いわずもがなの新型コロナ感染症のパンデミックによるものです。

1990年を月足で見る

1990年の月足チャート。ChatGPT4がPythonを使って描画。「月」が表示できていないのはご愛嬌。

 大蔵省の土地バブル潰しのための総量規制、日銀の金融引き締め、そしてビッグニュースとしては8月2日のイラクによるクウェート侵攻でとどめという感じでしょうか。まさに夢から覚めていくような感覚だったのだと思います。(当時、私はまだ子どもだったので)

 株価は、企業の成長とともに上昇していきますが、大きな変動には政策や世界規模のビッグニュースがついてまわるということです。

今はバブルなのか

 今がバブルで、バブル崩壊が間近だという主張があります。その根拠はなんでしょうか。「根拠」なんていうと、確実性があることになってしまいますから、考えられる理由とでも表現した方がよいでしょうか。

バブル期最高値を更新した

 バブル期と同値ということは、バブル期。こう言葉で表現してしまえば、そんな単純なわけがないとわかるのですが、株価に関心のない人なら、これが普通の感覚なのではないでしょうか。

先物主導で価格が乱高下している

 一般的に、株価が高いほど、価格の変動幅も広くなります。日経平均株価が7,000円のときに1日に500円の値動きがあったら相当なことですが、40,000円のときに1日500円の値動きがあるのは、「今日は値動きが大きいな」とは思うでしょうが、とんでもない1日とは思わないでしょう。

 ただ、現物株の取引量よりも先物の取引量が明らかに多い場合、投機筋がその価格変動幅を利用して荒稼ぎをしていると見ることができます。

 日経平均ボラティリティインデックスを見る限り、そんな過熱感があるようには感じませんけど。。

一般人(投資の素人)が株に手を出している

 実は、インフレ率はバブル期でもそれほど高くありませんでした。消費税の導入で多少の物価率の押し上げがありましたが、なんだか中学生の社会科で習った「好景気=インフレ」というほどではなかったようです。とはいえ、金利はそれなりに高く、私も子どもながらに郵便局の定期預金に預けたお金が満期で倍になったのを記憶しています。8%くらいあったのでしょう。

 ですが、株価の上昇率はもっと高かったわけです。バブル期は、まさに株価が右肩上がりでしたから、「株を買えば儲かる」と皆が思っていました。好景気で、物価の上昇率もそれほどではなく、一般人の懐が温かく、お金は使えるし投資すれば儲かるしという状態だったわけですね。

 バブル期と現在での、庶民感覚は全く異なります。ですが、一般人が株に手を出しているというのは事実です。一般NISAが1月から始まり、まさに政策によって一般人の株式投資を牽引しているんですね。ほとんどの人はeMAXIS Slimのオルカン(全世界株式)かS&P500を買っていると思いますが、国民の資産が株式に動いているのは確かです。

 暴落が起きたときに、尻尾をつかまされて大損して退場するのはもちろん一般人からです。警戒するにこしたことはないでしょう。ただ、バブル期とは投資先や得られる情報、AIなどによって一般人もリスクを低減する手立てを講じることがかなりできるようになってきています。まして、浮かれているわけではないのですから、その点においては「バブル」というほどの乖離があるとは私には思えません。

最高値更新が意味すること

 日経平均株価が史上最高値を更新したことは、もちろん喜ばしいニュースです。しかしながら、これはバブル期のような好景気を意味するようなお祭り騒ぎでは全くありません。

 「株はものすごく危険」という強烈な印象がはびこり、企業に資金が入らなくなり、経済が大きく失速しました。会社の急成長が見込めなければ、銀行も融資したお金の回収も難しくなるので、金利も上がりません。社員の給料も上がらないので、物価がどんどん下がります。本当に日本経済にとって「失われた30年」だったのですね。

 それでも、絶え間ない努力があったからこそ、技術発展が止まることがなく、今のような富の豊かさを築いていくことができたわけです。政策一つと、世界のビッグニュースで、経済は大きく揺さぶられ続けるのです。それは今後も同じです。

 ですから、私の感覚では、「バブルのようなお祭り景気がやってきた」や「実態経済に合わない高揚感があって危険」ということではなく、「やっと30年前の経済に回復した」というものです。

 現在は、ロシアウクライナの問題やイスラエルガザの問題など、安全保障の大きな問題の真っ只中です。いつ、ビッグニュースで大暴落があってもおかしくないことは確かです。ただ、暴落が起きたとしても「バブル崩壊」という表現は似合わないでしょう。

 庶民が「お金を使う楽しみ」をもてる世の中がきたらそれは幸せだなと思いますが、豊かさを築こうと仕事したことが報われていく経済が回っていくとよいなという思いを強くもっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました