情報活用能力の育成が進まないワケ

教育

 小中学校で情報活用能力の育成が進まないワケは、簡単にいうと「教科でない」からです。小学校においてもそうだと考えると、いくら担任が多くの教科を受け持っていてもなお、「縦割り」な教育なのだなあと感じます。

 教科横断的な学びというのは、総合的な学習の時間などに代表されますが、1年生の教科書を見るとほとんどの教科が横断的に「活動」をベースに組まれています。総合的な学習の時間が「領域」として設立されたのに比べ、生活科が「教科」として設立されたことが大きいのかなと思います。学校たんけんをする時期であれば、国語には「なんていおうかな」、算数では「なんばんめ」など、それにからめていける学習がのっています。

 学年が上がるにつれて、それぞれの教科がアカデミックになっていくために、なかなか関連づけて学ばせるのが難しくなってきます。それでも、総合を上手にやる先生や教科を究めて学級経営の軸にできるような先生などは、横断的な学びを展開していたりします。

 さて、情報活用能力については、あらゆる教科領域の中に入れ込んでいくことが大事です。そして、IE-Schoolなど、さまざまなところから「情報活用能力育成の体系表」は出されています。正直いって、それを各学校でカスタマイズしていけばそれでよいのです。

 でも、なかなか推進がはかられません。その理由は、「いつまでにここまでできるようにしなくてはならない」といったものがないからということが一つ。すなわちそれは、「評価計画がない」ということに等しいのです。

 ある程度、定量的な評価を組んでみてはどうかなと考えています。ただ、その根拠を求められると厳しいのですよね。たとえば「1分に50文字入力できるようになっているか」という評価指標を5年生に設けるなどはとても大事かと思います。ただ、「なぜ50文字なのか」をはっきりと説明することは難しいです。文字入力は、ノートに鉛筆とちがって、間違えたときの消しゴム作業時間が0に等しくなります。子どものストレスもほとんどありません。そして、文字入力が1分に50文字程度までいくと、圧倒的にライティングのスキルが身についていきます。言語表現する時間が鉛筆よりもはるかに速くて短縮されることにより、思考する時間をとれるからです。パソコンが普及した頃は「キーボードで入力しているのとノートに鉛筆で書いているのとでは、思考力が全然違う。PCで打った論文は低レベルなものが多い」とかよく言われていましたが、今は真逆だと思います。

 それくらいの実感と、論拠はあるのですが、根拠がないんですよね。5年生で1分50文字が目安といったことは。ただ、国語科で「このレベルのレポートが作成できるようにしたい」といった評価指標が出されれば、あるいは社会科で「このレベルの情報整理と分析ができるようにしたい」といった評価指標が出されれば、あるいは理科で「このレベルの実験シミュレートや記録のデータ整理ができるようにしたい」といった評価指標が出されれば、根拠となると思うのです。やはり、縦割り教科研究を続けるのであれば、各教科が情報活用能力について本腰いれて検討していかなければなりません。

 情報教育の担当者は、そこまではっきりした根拠をもって示すことは難しいかもしれません。でも日々の実践の積み重ねから、ある程度の指針を作ることは可能です。ぜひ、評価計画を盛り込んだ情報活用能力育成のカリキュラム作りに舵を切ってもらいたいと思います。

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