ドリルは紙かデジタルか

教育

 GIGAスクール構想も3年経ち、デジタルドリルアプリがだいぶ普及してきたようです。自治体レベルで導入しているところもたくさんあります。そうでない自治体でも、導入を検討している学校が非常に増えてきました。そこで、校内の職員で導入にあたってどのような議論がなされているのか、そして導入への糸口はどこにあるのかを探っていきます。

 ドリルに関しては、紙かデジタルか、どちらかを選択するというのはほぼ間違いがありません。なぜならば、保護者に費用を二重で負担してもらうわけにはいかないからです。ただ、デジタルドリルアプリの場合は、年間ライセンス契約で国語算数理科社会など複数教科を一括して契約することができますので、料金によっては紙との併用ということも絶対ないわけではありません。

デジタルドリルのメリットデメリット

漢字は書いてこそ?

 現に、多くの学校では「漢字ドリルは紙がよい」といった意見が根強くあります。

 先に私の個人的な意見を述べさせていただきますと、これについて私は猛反対です。これだけデジタルが普及した世の中で、Z世代ではない昭和平成世代が、自分の子どもの頃の学習観を引きずっているのはあまりに時代錯誤だからです。「紙に書かないと漢字は覚えない」という意見もありますが、だったら覚えなくてもいいとすら思います。言語において大事なのは「読み取り理解できるか」と「的確に伝えることができるか」です。覚えることを否定するものではないですが、言語をただ知識として記憶することは学習の優先順位として非常に低いと私は考えています。いかに「使えるか」が重要であると考えています。

デジタルドリルは発展途上

 デジタルドリルは、正直言ってまだまだ開発途上です。失礼ではありますが、使い勝手としては「及第点」くらいです。管理統制的な使い方としても、学習の助けとしても。しかしながら、「個別最適な学び」「主体的に取り組む態度の育成」といった観点では、デジタルドリルアプリは、紙のドリルよりもはるかにメリットが大きいの方が多いです。

フィードバックの早さがメリット!

 何より、デジタルドリルは、子ども自身へのフィードバックが迅速です。これは自学につながります。先生に提出して、先生が添削してそれを返すころには、次の学習が進んでいて子どもは振り返ることもしない(する時間的な余裕が今の学習サイクルにはあまり保障されていない)のです。でもデジタルドリルならば学習しているそのときに、正誤判定をしてくれますし、ポイントをリマインドしてくれますし、直しをすることもできます。これは「教師の指導の説明責任」という点では評価が低くなったとしても、「子どもが主体的に学び進める」ことを明らかに促進します。それを踏まえて、教師は身の振り方を考えるようにシフトすべきです。

指導の仕方の変更が必要かも

 デジタルドリルアプリは、子どもが学習したものを添削するという点でいうとほとんどデメリットしかありません。紙媒体のドリルであれば集めたものを次から次に添削できます。時間的ロスはほとんどありません。ところがデジタルドリルは、一人一人に対して画面遷移が多すぎ、しかも場合によっては正誤判定しか分からず、どの部分につまずいたかが不明瞭になります。デジタルだと、子どもたちの下校時刻までに添削して返さないと今日の宿題が出せないといったことがないのはメリットですが、ドリルを通して丁寧な習熟をはかろうとしていた先生にとっては、支援の方法に大きな変更を要求することになります。

働き方改革としてはどう?

 せっかくデジタルドリルアプリを導入したのに、その分習熟をはかるために紙の小テストのようなものをどこかからもってきて印刷しなければならない、という懸念もあります。働き方改革という視点から見て、かえって負担が増えないかということも考えていく必要があります。

まとめ

 いくつか考えて乗り越えていかなければならない課題はありますが、それでも流れからして(個別最適な学びの保障という視点からも)デジタル化していく必要はあります。メリットデメリットということを導入段階では比較検討するでしょうが、問題をそこにおくのではなく、自分たちの指導のあり方をどのように変革していくことで子どもたちによりよい学習を提供していけるかを考えることが重要ですね。

 最後に、私は漢字の学習については、紙でもデジタルでも「ドリルで完結することはない」という立場にあります。ドリルは習熟を促すものとして適切に使うものであって、指導は別にあります。私は漢字練習帳を併用しながらデジタルとアナログを行ったり来たりして指導すると思います。その中で子ども一人ひとりがどういったインプットを得手不得手としているかつかみ、よりよい方法を指導していくと思います。

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