年度はじめの仕事

教育

 学校の教員でなければ、年度はじめにどんな仕事をしているのか、想像つかないことでしょう。担任の先生はクラスの準備をしているだろうな〜くらいのイメージでしょうか。

 今回は、この5日間にやってきた仕事を、おおざっぱに書いてみます。

校務分掌を確認

 他の職業で、毎年毎年、担当する仕事が変わるということはあまりないかと思います。役所の公務員や学校の教員は、こういうことがよくあります。

 今年度は、「教務」「研究推進委員長」「ブロック・学年主任」「○年生担任」「社会科部」「情報部」「GIGA推進部」「学力・評価部」「人権部」「学籍部」「教科書部」「運動会委員会」・・・など。自分が所属することになる部署はどこなのか、また部長なのかといったことを確認します。

 実は職員異動が知らされるのは3月の中旬というか下旬にさしかかるくらいでして、しかも年度末は学級学年の教育活動のしめくくりでもありますから、猛烈に忙しいのです。そういう時期に急に異動が知らされ、また次年度の担当部署も分からないとなると、対面・口頭での引き継ぎは不可能。ですから、今年度担当になった部署で、どういう仕事をするかは、昨年度までの資料をもとに、経験のある職員に聞いてまわるしかないのですね。ニントモカントモ。

 ちなみに私は昨年度とおおよそ同じ担当なので、ほかの職員に声をかけながら仕事を進めていくことになります。

仕事分担をする

 所属する部署がめちゃくちゃたくさんあるなあと、ふつう思いますよね。学校現場はこれが現実です。この部署ごとに時間帯を分けて、「顔合わせと仕事分担の打ち合わせ」の時間をもちます。同じ時間帯に2つの部署に所属しているものがあることもあります。もうそこら辺はよきにはからってもらうしかありません。後輩から「これでお願いします」と言われれば「よろこんで」と答えますし、また私が長のものは予め分担を決めてみて「これでどうでしょう?」とおはかりします。会って話せるならば、部署の目的、今年度の目標、こまごまとした仕事一つ一つの意義とおよその内容を説明します。

 ざっくりと書きましたが、これが新年度5日間にやることで一番時間を割くことです。担当する部署がものすごく多くあるので、それぞれで1年間の中でいつどのように仕事をしていくかの見通しをもつことが必要になります。まあ、正直いってここらへんはもうベテランに任せてしまっていいと思うんですよね。若手の先生方が、ここを正面から受け止めすぎるとかかえきれない重圧に負けてしまうでしょうし、すぐに出会って本務となる担任業務に支障をきたしますから。本末転倒甚だしいです。「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」と声かけながら、こちらで猛スピードで仕事をしてしまうというのが、ベテランの働き方。

教科分担や時間割を決定する

 学年を組んだ先生と、誰がどの教科を担当するかを相談します。小学校教員は、基本全教科担当できるわけですし、全教科受け持つこともあります。低学年担任なんてそうですね。高学年になるほど、専科といって教科専門(の担当になった)先生にお願いするということもあります。

 が、今「チーム学年経営」というものが推し進められています(いや、「押し進められています」の方が適切な気が)。理想と現実がとんでもないことになりかねないんですけれど、これにはいろいろと主観があるので本記事では言及しません。

 例えば、1組の先生と2組の先生で「理科」と「社会」を分担するといったことをします。1組の先生は1・2組どちらにも理科を教え、2組の先生は1・2組どちらにも社会を教えるといった感じです。ただ、教科には各学年標準時数というものがありまして、しかも「働き方改革として余剰時間を減らすように」という指令が出ているため、超絶パズルが必要になります。

 標準時数を35で割ったものが、およそ1週間の時間割に入れていくコマ数になります。

 理科は105時間、社会は90時間だとすると、理科は週3コマで社会は2.6コマということになります。これだとうまく交換できないんですね。標準時数が同じならいいんですけれど、主要4教科はどの学年も標準時数が違うので頭を悩ませます。また、図工と音楽は標準時数が60時間で合う学年が多いですが、図工は通常2コマ連続でとる一方で音楽は2コマ連続でとりませんので、交換は難しくなります。(学年2クラスを想定した場合)

 さらに言えば、特別教室を何曜日の何時間目にどのクラスが使えるかを決めておかなければなりませんから、その配当表を教務が作成します。それに則ってこれら専科や教科分担ができるようにしなくてはなりません。たった一つの仕事の中では、一番時間がかかる仕事です。

 実際に時間割が決まってしまえば、と思うかもしれませんが、行事やらいろいろと入るため、年がら年中調整をしています。

 ・・・こんな状態で、余剰がほとんどない中、全ての教科領域の標準時数を満たして終わるなんて、それが「カリキュラム・マネジメントの力だ」なんて言われたら、まったく的外れだとしか言いようがありません。時数を満たすことが目的ではありませんから。

校外学習の下見

 新学期が始まってしまうと、下見に行く暇がありません。例えば勤務校だと6年生は修学旅行で日光に行きますが、平日子どもを帰してから日帰りで下見してくるなんて不可能です。ですから、下見をこのうちにしてしまうということに。

 職員からしてみれば、1日会議のない日を設定してもらって、こういう日があると助かるわけですが、新年度始まって「わあ、じゃあどこそこへ下見に行かなくては」となったとき、仮に4月1日に先方へ連絡したとしても、相手側からしてみればあまりに唐突に感じますよね。普通「暴力的だな」と感じると思います。ただ、見学先の近くに行ってうろうろしてくるだけなら相手はいませんけれど、せっかく下見に行くなら説明をしっかり聞きたいですし、子どもの安全確保のための細かいところを知っておきたいですから、なかなかに申し訳ない話ではあります。

 低学年は近場ですし日帰り遠足ですから、そこまで負担にはなりませんでしたけれど、4年生以上の宿泊行事の下見は大変だと思います。

 よかったことは、やはり年度はじめに学年のイベントとなるものをシミュレートしておくことによって、どこでどのような子どもの育ちが期待できるかに見通しをもてたことですね。

 一つ、びっくりして開いた口が塞がらなかったのですが、「今年度から、下見には2人分の旅費しか出なくなった」ということです。3人目からは自腹、あるいは行った人数で2人分の旅費をあとで折半するしかないと。あ、断りを入れておきますが、もちろん校長が決めたことじゃないですよ。全国ではどうなっているか知りませんが、本市は財政上そうなったということです。真面目に働くほど赤字になるシステムに放り込まれている学校教員ですが、その深淵やはかりしれずです。

 ちなみになんですけれど、校外学習の下見について、教員は実は複数回行っていたりします。もちろん、休日に自腹で。湯水のように出せないのは当たり前の話ですが、公務としての1回分も出せないなんて、そりゃさすがにないんじゃないのって思います。

年間指導計画を作成

 担当する学年の1年間の全教科・領域の指導計画を立てます。まあ例年ならば、「見直し」程度です。昨年度のものがありますから。

 教科書が変わる年は、大幅な修正が必要になることがあります。今年度は教科書が変わったので、しっかりやりました。同じ教科書会社のものであれば、教材の少しが入れ替わった程度だったのでさほど問題はありませんでしたが、教科書会社が変わるとかなり変更することがあります。

 まあ、「単元名」とか「教材名」で計画立てるからそういうことになるんですけれどね。算数なんかは系統がはっきりあるし、領域もはっきりしているから、教科書の単元名で計画立てるのが一番楽ですが、国語とか社会などは、指導内容で作っておけば10年間は使えるのにと思う気持ちもあります。

 5日間で、まだ未完成です。勤務校における月毎の授業時数に合わせていく作業がまだ残っています。ここまでできてやっと「教育課程を編成した」と言えるわけです。

学年引き継ぎ

 前学年から新学年へ、児童の引き継ぎを行います。また、担任決定をします。

 担当する学年は、通常年度末に内示されます。学級編成はそれ以前に前学年の担任たちでしているので、新年度の職員がわかってから、誰がどのクラスを受け持つかを決めることになります。

 引き継ぎはとても大事ですが、ただどんなに配慮事項や支援方法について情報を見たり聞いたりしても、子どもを前にして会ってその子を認識しないことにはあまり頭に入ってきません。担当する児童が2〜3人ではなく、30人ほどなのですから。これは、新学期が始まってから、旧学年の先生に繰り返し聞きに行くことになります。

入学式準備

 新入生を迎えるというのは、学校にとっては一大行事です。なので全職員で準備します。教科書・配布物をセットしたり、教室・校内環境を整えたり、体育館の会場設営をしたり、いろいろなことをいる職員で分担します。

 こういう行事系は、およそどこの学校でも同じ業務負担ですから、大規模な学校ほど職員数がいるので一人当たりの負担は軽くなります。初任校は学年1クラスで職員20人ちょっとの学校だったのですごく大変だったなあとふりかえります。2校目に行ったら学年3クラスだったので、一瞬で準備が終わってびっくりしたのを覚えています。

教材選定

 小中学校は義務教育ですが、何もかもが税金でまかなわれるわけではありません。ですから、家庭によっては結構大変だと思います。(就学援助制度があります)

 学年で使用する教材のうち、家庭のものとなるものは家庭から徴収することになります。学年費というものです。裕福な家庭からすれば「いちいち指定したものを家庭で用意しろとか面倒だから、学年費で統一して買ってくれたらいいのに」と思うでしょうが、公立学校としては「保護者負担は可能な限り少なく」が原則ですから、よくよく考えて決定します。もちろん、ケチりすぎては子どもに不利益が生じてしまうことにもなりますから、よくよく考えて決定しています。

 テスト、ドリル、図工や理科の教材、資料集など、内容を確認します。テストはもちろんそれぞれの会社がいろいろと考えた上で工夫して作問されています。「だめ」なテストがあるわけではないのですが、学校の実態や担当する子どもたちの実態と照らし合わせてみて、ねらっていける適切な問いになっているものを選んでいます。教科によってテスト会社がばらばらになってしまうのは、そういう理由です。

校外学習・出前講座の申し込み

 遠足や宿泊行事のほかにも、外部と連携して教育活動をするものがあります。もちろん、年度途中で検討して申し込むものもありますが、できる範囲で年度はじめに計画をして、申し込めるものは申し込みをします。

 それらの情報を集め、書類を作成し、先方と調整して決定していきます。自分の学年だけでは決められないことも結構たくさんあります。健康診断などこまかいことも含めて学校行事などに重ならないように日程に目星をつけたら、特別教室などを確認してどこの学年学級とどの教科に融通をきかせてもらうか確認してお願いをします。

第1週の計画と準備

 ようやっと、目前の計画と準備に入ることができます。学年の先生と話し合い、1週目の予定を立てていきます。

 先生も子どもも緊張しているでしょうから、とにかく1週目は「心ほぐし」が大事。そしてそのためには学級の雰囲気づくりの方向性をもたせる支援に注力することが大事です。

 学級活動を多くやればよいかというと、そういうわけでもありません。今後多くの時間は「学習時間」になっていきますから、新1年生にとっても2年生以上にとっても、「これからの日常がこんな感じに楽しく過ごしていけそうだ」という見通しと安心感をもつことが大事です。

 学習内容のレベルは少し下げ、先生と子どもたちとで楽しい授業展開を作っていけるとよいです。

 今は、経験年数が若い先生が多いですから、学級びらきや学習びらきについて、どのような意図でどんなトーンで進めていくとよいかを、私はじっくり話します。若い先生は、方法論とかアイテムとかが安心するんだと思うのですが、やはり人を相手にする仕事で、そして教育という人を育てる仕事である以上、目的をはっきりさせるということを抜きにしてはうまくいかない、というのが私の哲学であります。つまり、ワークシートとか展開とかを学年主任と同じに合わせても、その意図をちゃんと理解していないと絶対うまくいかないということです。逆に意図を理解し、方針が定まっていれば、その先生の得意とすることやアイディアを生かした手立ての方が絶対うまくいくんです。そういうことを、ゆくゆくは実感してもらいたいなあと思っています。

 あとは、初日の配布物のとじこみをしたり、教室環境を整えたり。まずは初日を成功させるためにできることを。これは完全に時間外でしたけれど。学年の先生と「金曜ロードショーのすずめの戸締りが家で観られるように」と話しながら、準備しました。

 週末は、天気が悪そうなので出勤したくありません。家で、校内研究の全体計画を立てることと、区の研究会の全体計画を立てることを、しくしく泣きながらやります。

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