学校で交わる親子の眼差し

教育

 授業参観は、学校にとってみると広報手段の一つになります。学校の教育活動について見ていただくことで、学校と保護者の間に良好な信頼関係を形成していくためのものになります。

 教員としては、授業参観に何の教科をあて、どのような学習展開でいくかを考えます。

 私のセオリーとしては、次のような年間の計画を立てています。

授業参観の年間の計画

年度初め

 だいたいの学校が4月に1回目の授業参観があります。PTAの役員決めがあるからとか、本来の趣旨とはちょっと異なった意味合いで4月にやる理由があることもあるようですが、基本的には「新学級の雰囲気とそこに馴染む子どもの姿」を見てもらう機会になります。

  • 前学年までに醸成された風土を継承しているか
  • 前学年でくすぶったものが解消されつつあるか

といった保護者の方の関心に応える学習展開を検討します。子どもが新しい担任の特殊なやり方にふりまわされていないか、あるいは新しい担任の先生らしい学級生活の楽しませ方を歓迎しているかなどを見る機会になります。

 主要教科の国語か算数で硬派な学習をしつつ、子どもの関心に寄り添った教材をもってきて、子どもが乗り気で学習に向かう様子を見ていただけるようにします。

土曜参観

 土曜参観は、複数の時間をまたがって見ていただく機会になります。子どもの生活感が表れるようにします。授業から休み時間、休み時間から授業といった流れなどで、学校での生活全般を見ていただくことで、子どもがスケジュールに対してどのように立ち居振る舞っているか、また集団の中でどれくらい協調しているかをうかがい知ることができます。授業単発だと、担任の支援の手中しか見れませんが、ある意味担任のいないところでの子どもの動きを見ることができます。

 また、普段の平日開催の授業参観には来られない保護者の方も足を運んでいただけることもあります。教科としては何でもよいのですが、子どもと保護者の方が直接対話できる場面を設定することが多いです。

 そして、私にはこの決まり事の意味は全く理解できていないのですが「年に1回は必ず道徳の授業を公開すること」という決まり事にそって、道徳を行う先生も多いです。正直なところ、道徳で自分の心をさらけだしたり、真に向き合ってふりかえったりするにあたり、賑やかな場で行うのはふさわしいと思いません。これはただ単に「教育活動のお仕着せ」「心を育んでいますよアピール」なのではないかと、私は懐疑的な立場です。それでも道徳を行うにあたっては、保護者の方も一緒に考えてもらいたいことを題材に設定します。たとえばデジタル・シティズンシップのように、子どもだけでなく周囲の大人も一緒に学習していくべきものを取り上げることが多いです。「抑圧・禁止」が道徳なのではないということ、ふりかえりそして考えて行動のアウトプットを決めていくことが大事なのであるということを感じてもらうことは非常に重要です。

9〜11月頃

 年度の半分を迎えた頃には、たいてい大きな行事を1つは経ています。学級や学年が集団として成長してきている様子を見せるよい機会になります。

 学年での活動を取り入れたり、学級活動や総合的な学習の時間のような、子ども主体で1時間を回していけるものを設定したりします。年度内のこれまでに学習したことを生かしながら、調査したり分析したりしている様子、友達同士で対話して解決を探っている様子が見られると、「安定して学習している」ことや「学ぶことに意味を感じている」という姿を感じてもらえます。

年明け

 残り3ヶ月は、次の学年を意識し始めています。また、発達がめざましい子どもたちからしてみると、4月の様子とはずいぶんと変わってきています。ときに、子どもに語る場面もあるかもしれません。粛々と学習を進める様子や、子どもに対して1ヶ月、3ヶ月先の姿について考えさせる場面があるかもしれません。

 見せてきている教科・領域もかさなってくる時期でもあります。場合によっては、教科担任として隣のクラスの先生が授業をしたり、専科の学習の様子を見ていただく機会にすることもあります。

 この時期の授業参観に、広報としてはあまり積極的な理由がないのですが、まだ見てもらっていない姿を見ていただけるように検討していきます。

年度おわり

 3月の授業参観は、子どもの学習成果を発表することが多いです。総合的な学習の時間は、本丸である地域での発表を終えて、エピローグとして設定することもあるかもしれません。私はあまり肩肘張らず、一人ひとりの1年間の学習で自信がついたことを発表してもらい、互いに称賛し合うような時間にするのが好きです。

 言葉には力がある、ということ。自らの姿勢は、人の心を動かしたり、人の行動に影響を与えるということを実感できるようにしたいというのは、どの学年を受け持っても1年間で目指す子どもの姿にしています。

 保護者の方には、ふだんは遊んでばかりのようだったり大人の声かけでやっと動いたりしているように見えていても、子どもが小さな体の中でたくさんのことを考え、精一杯学び続けて成長してきていることを感じていただきたいです。

 その分、「大仕掛けで無理してできたびっくりショー」ではない、地道な日々の積み重ねによる成果を見ていただく機会にしたいのですね。


おわりに

 子どもたちは、親が学校に来てくれることをとても喜んでいます。自分の第2の生活の場を誇らしく紹介する様子もよく見られます。そして、普段は見せない表情を、やはり親の前ではするのですね。子どもと保護者の方が交わす眼差しを見ると、とても幸せな気持ちになります。普段も、「子どものうしろには、この子のことを大事に思う人がたくさんいるのだ」ということを意識しながら教育活動にあたっているつもりですが、実際に保護者の方と話をしたり、子どもとの関わりを見たりすると、「ああ、ますます大事にしていこう」という気持ちになります。

 ・・・我が子の授業参観になかなか行けていないことが、とても心苦しい。おしまい。

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