ジェンダードイノベーション

日記

昔、「話の聞けない男、地図の読めない女」という本が話題になりました。男性と女性とでは、認知の仕方に違いがあるというものです。

脳科学の分野では、男性と女性での脳の働きの違いについて研究がなされており、一定の結果も出てはいます。しかしながら、巷で言われるような「男らしさ」とか「女らしさ」といったものは、そういった生物学的な性差によるものではないことも分かってきています。

たとえば昨日投稿した「子どもの人間関係トラブル」では、よく大人の方は「女子特有の〜」といった言い方をします。これについては、生物学的な脳の働きではなく、むしろ親などのすりこみによって「男らしさ」「女らしさ」に向かわせてしまっているという研究結果があります(人間の赤ちゃんを用いた、大人の関わり方の分析)。

一方、マウスの実験では狭い空間に一定数以上の個体を入れた場合、オスはエントロピーが増大した(距離をとるように行動が活発になった)のに対して、メスはエントロピーが減少した(集まるような行動をした)といった研究もあるようです。

「ジェンダードイノベーション」というのは、2005年にスタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授によって提唱されたものらしいのですが、私は今までその言葉自体知りませんでした。

医学の分野で、今この考え方を取り入れていく必要性が日本でも広まってきているようです。

脳だけでなく細胞レベルでの性差、大きくは男性と女性の閉経前と閉経後できちんとデータを平等にとり、医療などに活かしていく必要があるというのです。なぜなら、男性と女性では、同じ薬でも作用・副作用の出方がちがうことが分かってきているということ、それにも関わらず多くの治療の被験者は男性に偏っているということ、それによって女性のリスクが高い状態になっているということだそうです。

医療を受ける側でなくても、医療現場で働く立場でも同じようなことがあるとのこと。これは現在の医師の多くが男性であるために、医療器具が男性サイズを前提に開発されているといったものです。このように、社会的に男女差がある(ジェンダー差)職種などで、開発が遅れている(なされていない)ものによって女性が働きにくいという点もあるのだそうです。

とても驚くとともに、これは早く広まっていくことが大事だと感じました。

生物学的性と社会的・文化的性とをしっかり区別して、研究開発は進められていくことが望ましいと。ただそれでも、社会的・文化的性の影響を加味して研究分析を進めていくことが大事だということです。

これは、社会的・文化的性による行動によって、たとえば健康状態や疾病に関するものも統計的に影響をするからということです。女性ではげしいダイエットブームなどが起きると、統計データとしては大きくそれに影響を受けるという例がなるほどとてもよくわかりました。

ただし、「男女差を過剰に強調することは科学的にも社会的にも有害」であると、短絡的なジェンダー脳を語ることへの批判もあります。私も同意見です。実際研究されたデータを見ても、純粋なオスメスといった性的二型ではなく一般的な性差というのは、平均値の差よりも分散の方が大きいということが分かります。冒頭の本を持ち出して短絡的に語れば「男は話が聞けなくて、女は地図が読めない」ということになってしまいますが、実際は話が聞ける男もたくさんいるし、地図が読める女もたくさんいるということです。

医学の分野でのジェンダードイノベーションが進むことは大いに期待していますが、やはり世の中で「男ってやつは〜」とか「女子特有の〜」みたいな言説は、「B型は自己中で、AB型は二重人格」のような有害なラベリングにしかならないと思うのでありました。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、今年の1月に一般社団法人日本医学会連合と日本脳科学関連学会連合と生物科学学会連合と共催した研修会「性差を考慮した研究開発の推進~健康・医療分野における研究開発において、性差の視点を組み込む~」を、YouTubeに一般公開しています。どの方のご講演も15分という限られた時間だったのでかなり端折ってお話しされていたようですが、もっと詳しく勉強してみたいと思いました。

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